パナソニックHD代表取締役副社長 本間哲朗
この度、中国日本商会会長に就任した本間です。パナソニックで代表取締役副社長を務めています。1985年、同社に入社後、二年間の、台湾台北での研修を経て、中国向け家電営業、本社経営企画部長、家電事業責任者等を務め、2019年より中国北東アジア総代表として北京で勤務しています。
この間、私の中国とのかかわりは11年になりますが、1978年に行われた、パナソニックの松下幸之助創業者と鄧小平閣下の歴史的な会談から、ちょうど45年という節目の年に、中国日本商会の会長をお引き受けし、何か運命のようなものを感じております。
中国日本商会は1980年に北京日本商工倶楽部として発足し1991年4月外国商会の第1号として中国政府国務院に認可を頂いてから、一貫して、中国への経済的な貢献を志す日本企業、日本の団体が集う場として、様々な役目を果たして参りました。会員数は550社からなり、具体的な活動として、日本企業が中国で直面するビジネス上の課題や、日中両国政府への提言をまとめた「白書」の発行、中国・日本政府関係者との意見交換などの取り組みを進めております。
特に年に一度発行する「白書」は中国中央政府・地方政府関係者や、両国経済の研究者にも重宝される資料になっています。これまで商会活動を支えてこられた池添会長を始めとする歴代会長と役員の方々、「白書」の編集に携わってこられた執筆者の皆様に心から敬意を表したいと思います。
さて、近年、中国を巡る国際情勢は一層複雑さを増し、世界を覆ったコロナ禍で日中間の人的往来が途絶したことから、従来のやり方や考え方だけでは日本企業がこの国で競争力を維持し、持続的な成長を続けることが難しくなってきています。また、中国経済も、三本柱である不動産、個人消費、輸出のいずれも依然として回復の途上であり日本企業にとって厳しい状況が続いています。
このような状況下、中国日本商会として私が取り組みたいことを2点お話しさせて頂きます。
まず、一点目は、中国で活動する日本企業の声に幅広く耳を傾け、日中両国政府に対して効果的かつタイムリーに働きかけていくことです。多くの日本企業の声に接するために、本日定款を変更し、会員資格から北京周辺と言う条件を無くしました。
現在、中国日本商会には8つの部会がありますが、このうち主に製造業で構成される工業部会には、300社を超える会員が名を連ねています。今回私は製造業出身として、初めて中国日本商会の会長を務めることになりました。日本の製造業が、中国で本格的な投資を始めて30年、労働集約的な工場は姿を消し、今では自動車、自動車部品、素材、化学、電子部品、生産設備等の資本集約的な工場と、熟練技能工・技術者の雇用が大半となっております。
日本企業は中国を「製造大国」「消費大国」としてではなく「イノベーション大国」「エンジニア大国」として見る必要があります。スマートIoT家電に代表される新しい商品や、モバイルeコマースのような新しいビジネスモデルが次々と生まれ、強いサプライチェーンと厳しい市場競争を通じて、世界に通用する競争力が磨かれる市場といえます。このように変化のスピードが極めて速い「イノベーション大国」「エンジニア大国」の中国市場で勝ち残れるように日本企業の活動をタイムリーにサポートしていくことが中国日本商会に求められていると考えております。
製造業に限らず、金融・商社・運輸・サービスなど日本の産業界全体から見ても、中国は非常に重要なパートナーと言えます。 中国における事業環境の整備、新たなビジネスチャンスの創造に向け、商会は中国で活躍する日本企業の声に幅広く耳を傾け、日中両国政府に対して働きかけを行って参ります。
そして、二点目に取り組みたいことは、商会の発信力をこれまで以上に強化していくことです。三年に及ぶコロナ禍で、人的往来が制限される中、両国民の間には情報と認識のギャップが生まれています。そしてそこには誤解もあると思います。日々、日本企業が直面する中国ビジネスの厳しさと同時に、新たなイノベーションによる中国の躍動感、若い中国人社員と共に取り組むスピード感を、日本にいる経営幹部や従業員、ひいては日本社会に、正しく伝えていかないといけないと考えております。この点につきましては、是非とも本日ご出席のメディアの皆様方にも倍旧のご理解とご協力をお願いしたいと思います。
私は地方出張の合間に、日中交流の旧跡を訪ねることを密かな楽しみにしています。皆様ご承知の通り、日中両国の交流は、隋や唐の時代から続く、壮大な営みであり、さまざまな両国間の歴史を経て、今日に至っております。中国日本商会としても積み重ねられた人的交流の厚みを活かしながら、両国関係の未来に向けて「変わる中国日本商会」「新しい日中協力時代に取り組む中国日本商会」を目指して活動して参ります。